酒が切れた。 あんなに美味かった酒がもう無いとオヤジは言う。 もちろん、そんなの嘘に決まっている。 オヤジはいつもオレに嘘をつくからだ。 だから、あの酒はまだどこかにあるに違いない。 酔いのせいかもしれないが、ちょっと思考が短絡的だな。 とにかく、あの酒がもっと飲みたい。 隠すんじゃねーぞ。いいから早く出せ。 は? あの酒は特製なんだと? もうほんとに残っていない、だと? また色々と言葉を弄して誤魔化そうとしてねーだろうな? ん? 厳密に言えば無くは無い?やっぱりあるんじゃねーか。後で一人で飲む気だったな。 違う?オヤジは飲むつもりはない、だとぉ!フザケンナ! 誰にやるつもりだよ? はぁ、捨てる?てめぇ、ぶっころされてーのか?よこせよ! わかんねーのか?オレによこせってんだよ!クソオヤジ! どんなとこに入ってよーが、気にしねーよ。口ん中入れば同じだ。 よし、ようやく出す気になったか…じらしやがって………。 …………おい、酒のある場所って…………
オヤジの出した酒をオレは飲み始めた。 いや、酒じゃない、オヤジの小便だ。確かにアルコールの味はする。でも、これは小便だ。 わかってる。普通じゃない。 オレは今、オヤジの小便を飲んでいるんだ。 止められない。 頭ではおかしなことだとわかっているのに、身体が勝手にジョッキを傾けていく。 口いっぱいに小便を含むと、一気にオヤジの小便が喉を通過する。 マズイ。 不味いに決まってんだろ! 小便だぞ!?なのに……なのになんでオレはおかわりをしたいって思うのだろうか。
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