らくがき

大学生に入学してすぐに、同じ大学の一年先輩で高校の頃から付き合っていた人と結婚しました。
翌年には長女を出産。四年生の秋にも次女を産みました。
妊娠、出産、子育てをしながらも、大学を無事卒業。
就職先は敢えて夫とは異なる職種を選びました。能力次第では、30歳代で部長もありうるという会社です。

私はもともと「できる女」に憧れていたこともあって、入社するや否や仕事にのめり込む毎日を過ごしました。
営業成績は常にトップであり、経営システムの改善案を毎月提出し、
それが常に的確で実効性が高いものと認められ続けるなど、私にとって天職であったのかもしれません。
会社創設以来最速の2年で係長に昇進。その2年後には課長に、そして30歳で部長にまでなりました。
この調子でいけば40前で取締役にだってなれるかもしれません。

そんな私の私生活が幸せである……わけがありません。

課長に昇進した直後に、夫と別れることになりました。
学生時代の夫はいつも自信家で、有言実行、全てが完璧でした。
しかし、社会に出てみるとどこにでもありふれた、「少しできるだけ」の人だということに私は気づいてしまったのです。
夫も次々と仕事で成功する私のことを心から祝福できないらしく、いつしか二人の間は息詰まるものへと変化していきました。

子供たちのためにも私達は離婚という選択を決断しました。

子供二人の養育は私の稼ぎならば、まったく苦労しませんので、親権は私に慰謝料や養育費は無しということで話がつきました。

その直後から夫とは連絡が取れなくなり、また私も別にそのことを気にせず更に仕事に没頭するようになったのです。

私たちの不仲が原因だとは思いたくは無いのですが、離婚成立からわずか三ヶ月後に次女が精神不安定になり入院しました。
原因不明の高熱を繰り返し、お医者様からはどれだけの期間入院し続けることになるかわからない、
加療し続ければ大変な金額がかかると言われましたが、大切な娘の命を救うのになんの躊躇いもありません。
これまで住んでいたマンションを売り払い、長女と二人が満足して住めるだけのアパートに引っ越しました。
売却代金とこれからの私の収入があれば、治療法が発見されるまで娘を生き長らえさせることができるはずだったからです。

そうした私生活での問題もあり、責任ある立場になってから私は「鬼」「悪魔」「女王気取り」
「サディスト」と部下や他の部署の同僚達に陰口を叩かれるような仕事の鬼になりました。

なんと呼ばれようとも、私は結果を出し続けました。
それだけが自分と子供達を守る方法だったからです。
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